Web Syllabus(講義概要)
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科目名:化学
英文名:Chemistry
科目概要:薬・創薬, 1年, 前期, 必修, 1単位
A, B, C, D, S, 月曜日5時限
A, B, C, D, S, 金曜日3時限
科目責任者:牧野 一石 (医薬品化学・教授)
担当者:牧野 一石 (医薬品化学・教授), 西野 貴司 (学習支援室・准教授)
備考:臨床検査技師養成科目 
〔科目ナンバリング:PP201-CH01, PL201-CH01〕

授業の目的

「化学」は原子や分子が相互作用し、あらたな物質が生み出される変化を説明する学問である。現在では原子や分子が引き起こす化学的変化を予測し、自在に制御することが可能となる時代となった。薬学部において、新薬の開発や医薬品の薬理活性、さらに生命現象や疾病を原子・分子レベルで理解するために「化学」は必須の学問である。本講義では、原子や分子の物理化学的性質や反応性を理解するために、原子の電子配置の変化にもとづく化学結合の形成や分子の立体化学について学習する。
この科目は学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)の薬学科①、生命創薬科学科①に関連する。

教育内容

原子の電子配置と化学結合の基礎に関する講義を行う。
また、薬の多くは有機化合物(炭素を含む分子)である。分子の構造は紙面上に二次元で描かれているが、実際には三次元的に広がった構造(立体構造)をしている。それは、炭素の4本の手は中心から正四面体の頂点に伸びているからである。分子に不斉炭素(炭素の4本の手にすべて異なる原子や原子団が結合)があるとき立体異性体が生じる。薬学の中心となる薬(有機化合物)と生体成分との関係について化学的な視点でとらえるとき、立体化学(立体異性体)の理解が必要である。ここでは、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマーなど)の見分け方、分類および物理的・化学的性質について講義する。

教育方法

パワーポイントと配布資料を活用しながら講義形式ですすめる。また、分子を立体的に見えるようにするために、分子模型を用いて実際に分子を組み立てる。

講義内容

No.講義項目担当者開講日到達目標・学習方法・内容SBO
1化学と薬学,原子の構造牧野 一石
5月18日薬学の基礎としての化学の重要性を理解し、化学構造式の意味を考察できる。原子の構造、質量数、原子量、同位体、原子番号、価電子、貴ガス、オクテット則について説明できる。
2化学結合①牧野 一石
5月22日原子間結合であるイオン結合と共有結合について説明できる。
電気陰性度に基づいてイオン結合と共有結合の連続性について説明できる。
ルイス構造式、形式電荷について説明できる。
3原子の電子配置①牧野 一石
5月25日オクテット則を満たさない分子の例を列挙し、その理由を説明できる。
ルイス酸、ルイス塩基について説明できる。
4原子の電子配置②牧野 一石
5月29日「カーブした矢印」で電子の流れを表し、共鳴理論について説明できる。
原子間結合である金属結合、配位結合について説明できる。
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。
5化学結合②牧野 一石
6月1日原子軌道(電子軌道)を構成する殻(K殻,L殻,M殻,N殻)と、副殻(s軌道,p軌道,d軌道)について説明できる。
組立て原理、パウリの排他原理、フントの規則について説明できる。
原子の電子配置について説明できる。
電子の「波」と「粒子」の二重性について量子論に基づいて説明できる。
原子価結合法(VB法)と分子軌道法(MO法)について説明できる。
6化学結合③牧野 一石
6月5日メタン、エタン、アセチレンの立体構造を混成軌道(sp3混成軌道,sp2混成軌道,sp混成軌道)にもとづき説明できる。
二重結合の幾何異性(E / Z表示)について説明できる。
7化学結合④牧野 一石
6月8日水、アンモニア、三フッ化ホウ素、二酸化炭素の立体構造を混成軌道にもとづき説明できる。
8化学結合⑤牧野 一石
6月12日メチルカチオン、メチルアニオン、メチルラジカルの立体構造を混成軌道にもとづき説明できる。
9分子の性質牧野 一石
6月15日分子間相互作用であるイオン間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、分散力(London力)、疎水性相互作用、イオン-双極子相互作用、電荷移動錯体(CT complex)について説明できる。
物質の沸点および水への溶解度について、分子間相互作用に基づいて説明できる。
10立体化学①西野 貴司
6月29日構造異性体と立体異性体について説明できる。
キラリティーの概念を理解し、エナンチオマーについて説明できる。
11立体化学②西野 貴司
7月3日医薬品と生体分子との相互作用を化学的な観点(とくに立体構造)から説明できる。
絶対配置の表示法を説明できる。
12立体化学③西野 貴司
7月6日三次元分子をフィッシャー投影式とニューマン投影式を用いて二次元で表現することができる。
13立体化学④西野 貴司
7月10日ジアステレオマー、ラセミ体、メソ化合物について説明できる。
14立体化学⑤西野 貴司
7月13日置換シクロヘキサンの安定な立体配座を決定する要因について説明できる。
二置換シクロヘキサンの立体異性について説明できる。
No. 1
講義項目
化学と薬学,原子の構造
担当者
牧野 一石
開講日
2020-05-18
到達目標・学習方法・内容
薬学の基礎としての化学の重要性を理解し、化学構造式の意味を考察できる。原子の構造、質量数、原子量、同位体、原子番号、価電子、貴ガス、オクテット則について説明できる。
SBO
該当なし
No. 2
講義項目
化学結合①
担当者
牧野 一石
開講日
2020-05-22
到達目標・学習方法・内容
原子間結合であるイオン結合と共有結合について説明できる。
電気陰性度に基づいてイオン結合と共有結合の連続性について説明できる。
ルイス構造式、形式電荷について説明できる。
SBO
C1111化学結合の様式について説明できる。
C3113基本的な化合物を、ルイス構造式で書くことができる。
No. 3
講義項目
原子の電子配置①
担当者
牧野 一石
開講日
2020-05-25
到達目標・学習方法・内容
オクテット則を満たさない分子の例を列挙し、その理由を説明できる。
ルイス酸、ルイス塩基について説明できる。
SBO
C3115ルイス酸・塩基、ブレンステッド酸・塩基を定義することができる。
C3119基本的な有機反応機構を、電子の動きを示す矢印を用いて表すことができる。
No. 4
講義項目
原子の電子配置②
担当者
牧野 一石
開講日
2020-05-29
到達目標・学習方法・内容
「カーブした矢印」で電子の流れを表し、共鳴理論について説明できる。
原子間結合である金属結合、配位結合について説明できる。
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。
SBO
C1111化学結合の様式について説明できる。
C3114有機化合物の性質と共鳴の関係について説明できる。
C3119基本的な有機反応機構を、電子の動きを示す矢印を用いて表すことができる。
No. 5
講義項目
化学結合②
担当者
牧野 一石
開講日
2020-06-01
到達目標・学習方法・内容
原子軌道(電子軌道)を構成する殻(K殻,L殻,M殻,N殻)と、副殻(s軌道,p軌道,d軌道)について説明できる。
組立て原理、パウリの排他原理、フントの規則について説明できる。
原子の電子配置について説明できる。
電子の「波」と「粒子」の二重性について量子論に基づいて説明できる。
原子価結合法(VB法)と分子軌道法(MO法)について説明できる。
SBO
C1111化学結合の様式について説明できる。
C1112分子軌道の基本概念および軌道の混成について説明できる。
No. 6
講義項目
化学結合③
担当者
牧野 一石
開講日
2020-06-05
到達目標・学習方法・内容
メタン、エタン、アセチレンの立体構造を混成軌道(sp3混成軌道,sp2混成軌道,sp混成軌道)にもとづき説明できる。
二重結合の幾何異性(E / Z表示)について説明できる。
SBO
C1112分子軌道の基本概念および軌道の混成について説明できる。
No. 7
講義項目
化学結合④
担当者
牧野 一石
開講日
2020-06-08
到達目標・学習方法・内容
水、アンモニア、三フッ化ホウ素、二酸化炭素の立体構造を混成軌道にもとづき説明できる。
SBO
C1112分子軌道の基本概念および軌道の混成について説明できる。
No. 8
講義項目
化学結合⑤
担当者
牧野 一石
開講日
2020-06-12
到達目標・学習方法・内容
メチルカチオン、メチルアニオン、メチルラジカルの立体構造を混成軌道にもとづき説明できる。
SBO
C1112分子軌道の基本概念および軌道の混成について説明できる。
C3117炭素原子を含む反応中間体(カルボカチオン、カルボアニオン、ラジカル)の構造と性質を説明できる。
No. 9
講義項目
分子の性質
担当者
牧野 一石
開講日
2020-06-15
到達目標・学習方法・内容
分子間相互作用であるイオン間力、双極子-双極子相互作用、水素結合、分散力(London力)、疎水性相互作用、イオン-双極子相互作用、電荷移動錯体(CT complex)について説明できる。
物質の沸点および水への溶解度について、分子間相互作用に基づいて説明できる。
SBO
C1121ファンデルワールス力について説明できる。
C1122静電相互作用について例を挙げて説明できる。
C1123双極子間相互作用について例を挙げて説明できる。
C1124分散力について例を挙げて説明できる。
C1125水素結合について例を挙げて説明できる。
C1126電荷移動相互作用について例を挙げて説明できる。
C1127疎水性相互作用について例を挙げて説明できる。
No. 10
講義項目
立体化学①
担当者
西野 貴司
開講日
2020-06-29
到達目標・学習方法・内容
構造異性体と立体異性体について説明できる。
キラリティーの概念を理解し、エナンチオマーについて説明できる。
SBO
C3121構造異性体と立体異性体の違いについて説明できる。
C3122キラリティーと光学活性の関係を概説できる。
C3123エナンチオマーとジアステレオマーについて説明できる。
C3128エタン、ブタンの立体配座とその安定性について説明できる。
No. 11
講義項目
立体化学②
担当者
西野 貴司
開講日
2020-07-03
到達目標・学習方法・内容
医薬品と生体分子との相互作用を化学的な観点(とくに立体構造)から説明できる。
絶対配置の表示法を説明できる。
SBO
A136代表的な薬害の例(サリドマイド、スモン、非加熱血液製剤、ソリブジン等)について、その原因と社会的背景及びその後の対応を説明できる。
C3122キラリティーと光学活性の関係を概説できる。
C3123エナンチオマーとジアステレオマーについて説明できる。
C3125絶対配置の表示法を説明し、キラル化合物の構造を書くことができる。
C4311医薬品と生体分子との相互作用を化学的な観点(結合親和性と自由エネルギー変化、電子効果、立体効果など)から説明できる。
No. 12
講義項目
立体化学③
担当者
西野 貴司
開講日
2020-07-06
到達目標・学習方法・内容
三次元分子をフィッシャー投影式とニューマン投影式を用いて二次元で表現することができる。
SBO
C3122キラリティーと光学活性の関係を概説できる。
C3123エナンチオマーとジアステレオマーについて説明できる。
C3125絶対配置の表示法を説明し、キラル化合物の構造を書くことができる。
C3127フィッシャー投影式とニューマン投影式を用いて有機化合物の構造を書くことができる。
No. 13
講義項目
立体化学④
担当者
西野 貴司
開講日
2020-07-10
到達目標・学習方法・内容
ジアステレオマー、ラセミ体、メソ化合物について説明できる。
SBO
C3122キラリティーと光学活性の関係を概説できる。
C3123エナンチオマーとジアステレオマーについて説明できる。
C3124ラセミ体とメソ体について説明できる。
C3125絶対配置の表示法を説明し、キラル化合物の構造を書くことができる。
No. 14
講義項目
立体化学⑤
担当者
西野 貴司
開講日
2020-07-13
到達目標・学習方法・内容
置換シクロヘキサンの安定な立体配座を決定する要因について説明できる。
二置換シクロヘキサンの立体異性について説明できる。
SBO
C3122キラリティーと光学活性の関係を概説できる。
C3123エナンチオマーとジアステレオマーについて説明できる。
C3124ラセミ体とメソ体について説明できる。
C3215置換シクロヘキサンの安定な立体配座を決定する要因について説明できる。

評価方法

定期試験講義内容およびソロモンの新有機化学I第11版の問題から出題する。牧野担当範囲(60%)、西野担当範囲(40%:試験35%、課題5%)として評価する。
授業 
その他課題の提出は必須とする。

学生へのメッセージ

混成軌道や共鳴理論、「カーブした矢印」で電子の流れを表すことは大学の「化学」で初めて学ぶ概念になります。時間をかけて丁寧に説明しますので注意して聴講するようにしてください(牧野)。
はじめは分子を平面ではなく立体的に捉えることは難しいですが、分子模型を用いて、分子を三次元的に見えるようにしていきます。

準備学習(予習・復習)・その他

1【授業時間外に必要な学習の時間:30時間】
2予習として教科書を読んでおくこと。講義終了後には復習として教科書の問題演習をすること。
復習の方法としては課題問題や「ソロモンの新有機化学第9版上」の補充問題を解くこと。さらに、以下に示した複数の参考書(図書館に所蔵)を通読することを薦める。立体化学を理解するには、分子を分子模型を用いて組み立て、動かし、眺めることを薦める。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書薬学有機化学と無機化学の基本(2年次前期医薬品化学実習,3年次前期医薬品構造学Iでも使用する。)牧野一石京都廣川書店
教科書ソロモンの新有機化学I第11版 (2年次後期まで継続して教科書として使用する。)ソロモン著 花房、奥山、上西、
池田 監訳
廣川書店
教科書分子模型セット(化学に関するすべての講義で使用する。) 
参考書薬学教室へようこそ いのちを守るクスリを知る旅 (ブルーバックス)二井 將光 講談社
参考書基礎有機化学小林進、三巻祥浩 編培風館
参考書ベーシック薬学教科書シリーズ5 有機化学夏苅英昭、高橋秀依 編化学同人
参考書スミス基礎有機化学第3版 上Smith J. G.化学同人
参考書無機化合物・錯体-生物無機化学の基礎-第3版梶英輔 編廣川書店
参考書第6版ボルハルト・ショアー現代有機化学 上古賀憲司、野依良治、村橋俊一監訳化学同人
参考書ブルース有機化学第7版 上Bruice, P. Y.化学同人
参考書ジョーンズ有機化学第5版 上Jones, Jr. M.東京化学同人
参考書立体化学の基礎Morris, D.G. 著、石川勉 訳化学同人
参考書よくある質問 立体化学入門竹内敬人講談社サイエンティフィク
教科書
署名
薬学有機化学と無機化学の基本(2年次前期医薬品化学実習,3年次前期医薬品構造学Iでも使用する。)
著者・編者
牧野一石
発行所
京都廣川書店
教科書
署名
ソロモンの新有機化学I第11版 (2年次後期まで継続して教科書として使用する。)
著者・編者
ソロモン著 花房、奥山、上西、
池田 監訳
発行所
廣川書店
教科書
署名
分子模型セット(化学に関するすべての講義で使用する。)
著者・編者
発行所
 
参考書
署名
薬学教室へようこそ いのちを守るクスリを知る旅 (ブルーバックス)
著者・編者
二井 將光
発行所
講談社
参考書
署名
基礎有機化学
著者・編者
小林進、三巻祥浩 編
発行所
培風館
参考書
署名
ベーシック薬学教科書シリーズ5 有機化学
著者・編者
夏苅英昭、高橋秀依 編
発行所
化学同人
参考書
署名
スミス基礎有機化学第3版 上
著者・編者
Smith J. G.
発行所
化学同人
参考書
署名
無機化合物・錯体-生物無機化学の基礎-第3版
著者・編者
梶英輔 編
発行所
廣川書店
参考書
署名
第6版ボルハルト・ショアー現代有機化学 上
著者・編者
古賀憲司、野依良治、村橋俊一監訳
発行所
化学同人
参考書
署名
ブルース有機化学第7版 上
著者・編者
Bruice, P. Y.
発行所
化学同人
参考書
署名
ジョーンズ有機化学第5版 上
著者・編者
Jones, Jr. M.
発行所
東京化学同人
参考書
署名
立体化学の基礎
著者・編者
Morris, D.G. 著、石川勉 訳
発行所
化学同人
参考書
署名
よくある質問 立体化学入門
著者・編者
竹内敬人
発行所
講談社サイエンティフィク