科目名 | : | 生物薬剤学 |
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英文名 | : | Biopharmaceutics |
科目概要 | : | 薬・創薬, 3年, 後期, 必修・選択, 1単位 A, B, C, D, S, 月曜日2時限, 2202大講義室 |
科目責任者 | : | 前田 和哉 (薬剤学・教授) |
担当者 | : | 前田 和哉(薬剤学・教授)、奈良輪 知也(薬剤学・講師)、苫米地 隆人(薬剤学・助教) |
備考 | : | NR・サプリメントアドバイザー養成講座対応科目 〔科目ナンバリング:PP301-PK03, PL301-PK03〕 |
薬物が生体内で薬効を発揮するためには、適切な場所に適切な時間、適切な量が存在することが必須である。薬物の生体内での挙動(体内動態)は、薬物の生体膜透過、吸収、分布、代謝、排泄など様々な要因により決定づけられており、個々の過程が、薬物側の特性と生体側の機能との関係性に紐づいている。また、この関係性は、生体側の生理機能の変動や薬物相互作用など様々な内的・外的要因によって変化し、その結果、薬物の体内動態にも変化が生じうる。従って、これらについて理解することは、個々の患者ごとに異なる体内動態特性を把握し、臨床現場で最適な処方計画を提案する上で、また創薬現場で生体内で最適な薬効を示す薬物を選択する上で必須である。
本講義では、薬物の体内動態を支配する要因について一通り学習すると共に、薬物相互作用や遺伝子変異、病態、年齢等様々な要因により生じうる薬物の体内動態の変動機序について理解し、薬物の体内動態特性に基づいた最適な処方設計を可能にする基礎を理解することを目的とする。さらには、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の考え方に基づき、薬の体内動態を積極的に制御することで薬効を最適化する手法について学ぶことにより、体内動態の制御が薬効の最適化に有効な手段であることを理解することも併せて目的とする。
科目の位置づけ:薬剤系専門科目
この科目は学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)の薬学科④、生命創薬科学科①に関連する。
薬物治療の最適化にとって必須の要素である薬物の体内動態を生体側の要因および薬物側の特性の両面から理解することを目的として、薬物の体内動態の支配要因(生体膜透過、吸収、分布、代謝、排泄)について説明すると共に、生理機能の変動や薬物相互作用・遺伝子多型など体内動態に影響を与える諸要因および各要因によって体内動態のどの側面がどのように変動するかに関して、実臨床事例を交えて講義する。それにより、薬物動態の観点から、患者ごとの特性に応じた最適な薬物の処方設計を提案するための基盤となる知識・考え方を修得する。
A:薬物の体内動態を支配する要因(生体膜透過、吸収、分布、代謝、排泄)について生体側の構造・機能と関連づけながら理解することにより、薬物によって体内動態が異なる理由を論理的に解説できる。
B:体内動態を支配する要因に関わる代謝酵素・トランスポーター・結合蛋白質等分子と薬物との関連を学ぶことにより、個々の分子の発現や機能が個々の薬物の体内動態に与える影響について理解できる。
C:薬物の体内動態に起因する薬物相互作用の機序および臨床での実例を理解することにより、臨床での薬物相互作用を回避するための方策を提案できるようになる。
D:生体側の生理機能の変化や体内動態を決定づける分子の遺伝子変異が薬物の体内動態に与える影響について臨床事象と併せて理解すると共に、患者背景に応じた投与設計を立案する基本的な考え方が分かる。
E:ドラッグデリバリーシステム(DDS)の概念と技術、薬物の特性に応じたDDSの臨床での適用事例について理解することにより、DDSの有用性や適切な活用場面を提案することができる。
F:生物薬剤学の考え方を統合的に活用して、臨床で見られる薬物動態データの背景にある機序を合理的に説明し、課題解決の方策を提案できる。
教科書と配付資料をもとに、パワーポイントを用いた講義形式ですすめる。配付資料には演習問題がついており、一部を講義中に考えてもらう時間を与えると共に、その場で解答することで理解を促す。また、復習用の演習問題を配布し、各自の理解度のチェックに役立ててもらう。課題を課した場合には、各自から提出された課題にコメントを付して返却すると共に、次回の講義にて、課題の出題意図および模範解答に関する解説を行う。さらに、提出されたレポートに関して特に間違いが多かった場所について注意喚起・コメントをする。対面授業にて実施する。
No. | 講義項目 | 担当者 | 開講日 | 授業内容・方法 |
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1 | 生体膜の構造・性質と物質の生体膜透過 | 苫米地 隆人 | 9月1日② | 物質の生体膜透過機構(単純拡散、促進拡散、能動輸送など)とその特徴、および消化管の構造と消化管からの薬物の吸収機構について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「1.生体膜透過」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、Bに関連する。 |
2 | 薬物の吸収① | 苫米地 隆人 | 9月8日② | 消化管からの薬物吸収に影響を及ぼす因子、および吸収過程における薬物相互作用の機序について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「2.吸収(A-C項)」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、Cに関連する。 |
3 | 薬物の吸収② | 苫米地 隆人 | 9月22日② | 消化管以外の投与経路の特徴と薬物の特性に応じた投与経路選択の理由について学ぶ。 毛細血管の種類と構造について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「2.吸収(D-E項)」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、Fに関連する。 |
4 | 薬物の分布 | 奈良輪 知也 | 9月29日② | 薬物が結合する血漿中タンパク質および薬物のタンパク質への結合特性を解析する手法について学ぶ。 血液脳関門などの組織関門及びその特徴について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「3.分布」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、Bに関連する。 |
5 | 薬物の代謝① | 前田 和哉 | 10月6日① | 主な薬物代謝酵素の種類と酵素の局在、代表的な基質薬物と代謝反応について学ぶ。 活性代謝物とプロドラッグの考え方を理解するとともに、その意義と代表例について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「4.代謝(A,B項)」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、Eに関連する。 |
6 | 薬物の代謝② | 前田 和哉 | 10月6日② | 代謝過程における薬物相互作用の機序について学ぶともに、主な薬物代謝反応に対する代表的な阻害薬・誘導薬について臨床での相互作用の実例と結び付けて学ぶ。 薬物動態学的な相互作用による被相互作用薬の体内動態の変動割合に関する簡便なリスク評価法について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「4.代謝(C項)」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、C、Fに関連する。 |
7 | 薬物の代謝③ | 前田 和哉 | 10月20日② | 薬理遺伝学の基本的な考え方や遺伝子変異の種類について学ぶ。 代謝酵素の遺伝子多型が薬物動態および薬効・副作用に及ぼす影響について、臨床事例を中心に学ぶ。 【予習】事前に教科書の「6.個別化医療(A項)」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、D、Fに関連する。 |
8 | 薬物の排泄 | 奈良輪 知也 | 11月10日② | 腎臓の構造と薬物の腎排泄機構を理解し。腎クリアランスの計算法について学ぶ。 腎排泄過程における薬物相互作用の機序について学ぶ。 腎臓以外の臓器からの薬物の排泄経路とその特徴について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「5.排泄」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、C、Fに関連する。 |
9 | 病態・加齢が薬物動態に与える影響 | 奈良輪 知也 | 11月17日② | 病態および加齢による生理的変化が薬物の体内動態に与える影響について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「6.個別化医療(B-D項)」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】A、B、Dに関連する。 |
10 | ドラッグデリバリーシステム | 奈良輪 知也 | 12月1日② | 放出制御、標的指向化など、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の例、およびその特徴と目的について学ぶ。 【予習】事前に教科書の「第5章 ドラッグデリバリーシステム」の部分を一読する。 【復習】配布資料と教科書を用いた復習および配布資料に掲載の問題を自力で解答してみる。 【到達目標】Eに関連する。 |
定期試験 | 講義範囲全体から出題する。記述式。持ち込み不可。 |
授業 | 授業回数10回+定期試験 授業の進捗に伴い、それまでの学習事項の復習と共に、実際の臨床事例について論理的に説明するような知識の活用を目的とした複数回のレポートを課す。 |
その他 | レポート(10%)+定期試験(90%)に基づいて評価する。レポートの未提出や期限外提出は減点する。 |
本講義の内容は、薬剤師としての臨床で薬効を最大化しうる患者ごとの処方提案および創薬研究者としての薬効を最適化した医薬品の開発において重要な内容を含んでいます。
前に習った授業の内容や考え方が、別の部分でも繰り返し出てくることがありますので、その都度復習して講義に臨んでください。また、本講義は連続性があるので、分からないことがあればすぐに調べたり質問するなどして、その都度解決していくように努めてください。本分野特有の用語や定義が多く出てくるので、最初は難しく感じるかもしれませんが、授業のたびに配布する講義資料や課題・演習問題を通じて復習をサポートしたり、重要な部分は複数回説明したりするなどして、生物薬剤学・薬物動態学の基本的な考え方に早期に慣れてもらえるような講義にしたいと思っています。
なお本講義は、続く「薬物速度論」の講義内容の理解にも直結してきますので、しっかりと講義内容について理解していただきたいと思います。
1 | 【授業時間外に必要な学習の時間:30時間】 |
2 | 各回の講義で取り上げる内容に該当する教科書の範囲を提示するので、該当するページを一読してから講義に出席すること。 また、本講義開始前に、生理学IIの講義内容(特に循環系、尿の生成と排泄、消化器、呼吸)を復習してから本講義に臨むことを強く推奨する。 講義ごとに復習をサポートする演習問題等を配付するので、各自で問題に解答することで、各講義に対する理解度を自身で毎回把握するように努めること。 分からないことがあれば、オフィスアワー等を活用し、積極的に質問に来る等してその都度解決し、不明点の積み残しをしないように努めること。 |
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | パートナー薬剤学 改訂第4版 | 原島秀吉・伊藤智夫・寺田勝英・伊藤清美 編 | 南江堂 |
教科書 | 配布資料 | ||
参考書 | 臨床薬物動態学 改訂第5版 | 加藤 隆一 監修、家入一郎・楠原洋之 編 | 南江堂 |